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2009.07.13

マイナスの美学

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私が能楽に出会ったのは、香里能楽堂で開催された「能楽堂に行こう」というイベントに参加したのが始まりだった。その内容のあまりの面白さに、ぜひ生徒にも体験させたいと思い、主催者である辰巳満次郎さんに相談した。学校では年度初めに予算も組んでいないし無理かと思ったが、僅かな負担で生徒250人余りが能舞台にもあげていただき、楽器も体験することができた。そして最後には満次郎さんによる舞台も拝見できたのである。それからは満次郎さんからいろいろご案内いただいて、舞台に足を運んでいる。

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能には歌舞伎のような大掛かりな舞台装置もない。登場人物も、時には小袖で表現したり、ごく僅かな人しか出てこない。あとは見ている人それぞれが想像して観ていくのである。

うちの先生の日本刺繍は、余計なものを出来るだけそぎ落として「ぬい」をしている。繍技自体もシンプルで、模様の全部をぬいで埋めるような「ベタぬい」は絶対にしない。だから私は最近になってやっと刺しぬいというぬい方も習ったくらいである。全部をぬわずに奥行きを表したり、グラデーションを出したりという技術には、他所に見ないすごい技術である。お世辞抜きに、私は日本一の刺繍作家だと思っている。

私はうちの先生の刺繍と能には共通点があると思う。全部言って説明するのでなく、最も少ない量で表現しているという点である。先日も居酒屋「和民」の社長さんが愛読書の「論語」について話をされていた。「論語」の中では「他人の嫌がることはしない」というのに対して、「聖書」では「他人の喜ぶことをする」というのである。これって引き算、マイナスの美学ではないのだろうか。このマイナスの美学こそが「日本の文化」だと思っているが、いかがなもんでしょう。

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日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

kaoruさん、こんにちは~♪
能楽が一度も見たことがないんです。
学校時代からのお付き合いなのですね。
若い頃はまったく興味なかったんだけど
今の年齢なら楽しめるかなぁ~。
能と日本刺繍、一見なんの共通点もないようで
実はつながっている部分があるのですね。
だからkaoruさんが両方が好きなのかなぁ。

投稿: さおり | 2009.07.14 15:34

私も日本文化は「削ぎ落とす美学」だと思っています。
西洋のデコラティブな装飾文化と
対極の文化なのでしょう。
どちらもそれぞれ素晴らしい所があると思いますが
私は研ぎ澄まされた緊張感のある
日本文化を愛してやみません。

投稿: comichiko | 2009.07.14 16:18

さおりさん、こんにちは~
私もまだまだ能を楽しむというところまではきていないのですが
蝋燭能や薪能など、なんか独特の雰囲気が好きです。
私の場合、鳴り物が聞こえてくると、
そちらに気になって芝居の方はおろそかになってしまいます。
宝塚や歌舞伎のように、
観た途端とりこになるというようなものではないですが、
ぜひ一度観てみてください。

投稿: kaoru | 2009.07.14 17:57

comichikoさん、こんにちは~
以前お邪魔した老舗の呉服屋さんで言われたのが
デザインを描いていても、空間が怖くて埋めよう埋めようとしてしまう人が多い。
描いたものを消していくという勇気があるというのは
すごいことだということでした。
私などまだまだ先生の足元にも及びません。
日々修行ですね。

投稿: kaoru | 2009.07.14 18:02

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